『オリンピア』感想

ルビーは「ぼく」の妹の名前だ。

「ぼく」はピーター。父方の祖父母と父はオリンピック選手だった。その血を受け継ぐルビーとピーターにも特別な運動の才能が備わっていた。ルビーは空を飛べる。進化する少女だ。

少年時代からピーターと家族の暮らしには、死と戦争の影があった。

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人ひとりが辿る歴史、あるいは、家族という集団が辿る歴史において、多くのものが失われていく。命、船、さっきまでそこにあった景色。

この物語の中では多くの「失われる」瞬間が描かれる。それを受け止め続けるピーターと家族の心情をみつめたくなる物語だった。

短編連作形式で描かれるため、ピーターが少年から大人に成長するに従い、子どもの成長が両親の日常に変化をもたらしていく。そんな時間の流れのイメージが浮かび上がる。

オリンピックという時間の流れが、家族の時間と静かに重なる。

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『オリンピア』を読んだきっかけは、翻訳ミステリー読書会で数年前からお世話になっていた越前敏弥先生が、情報解禁日に公開した投稿でした。

これまでに越前先生の訳書はもちろん、先生が選書された読書会の課題本を読んできたので、長年の持ち込み企画という本であるなら、読んでみたいと思いました。

また株式会社北烏山編集室のご担当Mさんとも、JSHCのボランティアでご一緒させていただいており、ご縁を感じておりました。ご刊行おめでとうございます。